久しぶりに眩しい程の快晴の日、主人が一人で向かったのは「ルイ・ヴィトン銀座並木通り店」、お願いしていた品物を受け取りに訪れた。時間が余りなかったのでバタバタと用意をお願いする。その後遅れて東京入りした私と別場所で合流し、この日の宿泊先、昨年末にオープンしたばかりの「アマン東京(Aman TOKYO)」へ向かう。
その道すがら主人にルイ・ヴィトンでの詳しい話を聞いた。LVスタッフ達が高木先生と呼ぶ男性から、色々楽しい話を伺い写真集「ラ・ファブリク・デュ・タン ルイ・ヴィトン」を頂いたと言う。サラッと主人は話したが私は聞き逃さなかった・・
その男性はルイ・ヴィトンのウォッチ&ジュエリーを統括する高木恒雄氏ではないか!?高木氏と言えばショーメの取締役ディレクターだった宝飾会の重鎮。やだ~私も伺えば良かった!なかなか直々に説明頂けるなんてないわ、アナタ幸せね~と嫉妬(笑) と興奮冷めやらぬ中キラキラ輝く新しい超高層ビル「大手町タワー」に到着。
33~38階の上層を占める「アマン東京(Aman Tokyo)」は、アマンの27軒目のホテルにして初の都市型ホテル。ホテル入り口・車付けは分かりにくい場所にあり、タクシードライバーもまだ迷う人の方が多い。タワー周りには「大手町の森」が出来ていて、洞窟に入るような不思議な風情のホテルエントランス。
その大手町の森は何と3600m2、3年かけて育成した木々・草花(81種56000本)を移植した。都会のど真ん中高層ビルにして、自然を身近に感じる環境をわざわざ作ったと言うから驚き。まさに自然との調和や地域性をコンセプトに掲げるアマンならでは。
ちなみにこの一角には、自然と一体化した戸建ての「ザ・カフェ by アマン」が近々オープン予定、きっと人気スポットになるわね。つまりは入口の分かりにくさも、秘境に伝説のリゾートホテル(究極の隠れ家)を築いてきたアマンリゾーツらしい演出と言う訳。
設計はオーストラリアの建築家ケリー・ヒル(Kerry Hill)氏、彼にとってアマン6軒目の作品となる。トロピカル・リゾートを得意とする彼が、都心型に挑むとあって期待したわ。そうそう、世界にアマンの名を知らしめたバリ島「アマンダリ」を手掛けた建築家ピーター・ミュラー(Peter Muller)氏も、同じオーストラリアの出身でケリーはその次世代を継ぐイメージ。
我が家が京都で常宿としている「俵屋旅館」と「アマンダリ」が似ていると言う都市伝説は有名だが、実のところはピーターが設計前に俵屋に宿泊した事が影響しているとの話。
1996年の「婦人画報」でアマン創業者エイドリアン・ゼッカ(Adrian Zecha)氏と俵屋当主佐藤年氏が対談しているが、お互いに「似ているとすれば」スモールラグジュアリーで痒い所にも手が届くパーソナルなサービス(ホスピタリティ哲学)、と言う程度の表現で語られていた。
おっとそうだ、ここ「アマン東京」でも大物にお逢いする事になる。まずはアマン東京総支配人ジェフリー F. スワード(Jeffrey F.Seward)氏、前職は「アナンタラ・リゾーツ」の統括で、その前は長く世界で「リッツ・カールトン」を立ち上げて来たエリート。
滞在中メインダイニング「ザ・レストラン by アマン」で食事をしていた私達の所へ、ににこやかに現れたスワード総支配人。爽やかなブルーのジャケットがお似合いで、明るく優しい話し振りはさすがだったよ。そしてチェックアウト時にお会いしたのは副総支配人・浅井信一路氏。
浅井氏と言えば「ザ・ペニンシュラ東京」の立役者でマーケティング・ディレクターだった方ね。フォーシーズンズも手掛けている業界の重鎮。帰りは荷物を車まで運んで下さり、エレベーター内でも穏やかに館内施設のポイントなどについて話して下さった。皆さん、成功者らしい大人の余裕・貫禄が素敵。
では細かい館内の話をしていこう、1階ロビーではまず炭画が目に入る、これは麻紙に描かれた菅原建彦氏の作品。エレベーター前の壁に広がる土壁アートは、左官技能士・挾土秀平氏の作品で、植物がテーマの三部作の一つ(後2つは33階と34階に上がったところ)。挟土氏の作品と言えば「ザ・ペニンシュラ東京」のフロント背後を思い出すね。
ゆっくりめのエレベーターで上がって、やっぱりメインは圧巻の33階ガーデンレセプション(中庭)。目に飛び込むのは広~い空間と、大きな窓、高~い吹き抜け。見上げれば広がる長さ40m・幅11m、高さは27m近くにも及ぶ障子の天井!?
思わず立ち止まってしばし眺める・・和紙を通した光の美しさを改めて思う。アマンを象徴する黒い玄武岩の床や壁はずっと長く伸びていて、天に浮かぶ巨大和紙照明が緩やかに包む。空間中央には流水の中に奥平清鳳氏の生け花、玉砂利の小庭、レセプションデスクは樹齢250年の楠木。
仕上げは着物姿の女性が奏でる琴の音ね。日本だけど純和風ではないモダンな日本、これからの日本はこうなって行くだろう思わせる、未来的だけど現実的な美しい日本。この点、「リッツカールトン京都」はある意味非現実的な幻想日本だった。
奥に並ぶラウンジ、メインダイニングの向こうに見える青い空と皇居の緑、遠くに富士山・・・そうか、ここは天空に浮かぶアマンの国だ。ゼッカ会長もオープン前に確認に訪れたそうだが、ケリーが描くゼッカワールドは都市型になっても開放的でダイナミック、そして安らかである事がこのフロア(中庭設定)で十分伝わる。
そんなコンテンポラリーな和の真ん中に座ってウェルカムドリンク「柚子ジュース」を頂く。効能などが書かれた紙が添えてあった。とにかく広い、平日だからか人もいないし、何とも開放的で心地よい。
そこへ作務衣風のユニフォームを来た担当嬢、館内を案内してくれると言う(チェックイン手続きは部屋で行う)♪ フロアを囲むような段差はいわゆる「縁側」イメージだとか。各所に飾ってある陶芸は服部将己氏や星野聖氏の作品。
館内にはその他日高理恵子氏・風能奈々氏・浅見貴子氏など、日本を中心とした16人の作家物が展示されている。そして主人が気に入ったのは「ライブラリー」、天井まで続く本棚には1300冊でテーマはモダニズム。日本人形や茶道具まで飾ってある。
見上げればどこまでも続く青い空、窓外の音と自然に共存できる様に敢えての無音。涼しげなドリンクやチェスなども置かれていて、高層ビルである事を忘れそうなリラックス空間よ。言えば部屋への本貸し出しもOK。
お隣は「ビジネスセンター」と「シガーバー」、そしてオリジナルカクテルが楽しめる「バー」、ブラックアフタヌーンティーが人気の「ザ・ラウンジ by アマン」、一番奥に「ザ・レストラン by アマン」と連なって行く。フロアをぐるっと一周して宿泊者専用エレベーターへ。部屋に行く前に、広さも自慢の「アマン・スパ」も見せて頂こう。
34階に降りるとアマンオリジナルのアロマが漂う・・落ち着いた涼しげな香り。左にはウェイテイングだけでも十分癒しの空間な「スパ」、右にはジムやヨガが出来る「フィットネスセンター」、何と2フロアで2500m2もある。
中でも廊下からも見下ろせる、8mの吹き抜けと全長30mの「ブラックプール」は美しかった。夕日が沈む景色は圧巻、そして夜には石壁に埋め込まれた照明が、点々と黒いプールの水面に浮かんで幻想的な世界になるとの事。プールサイドに浴衣姿で寛ぐだけでもリラックス出来るわ。
そんな新しい都会のアマン国を垣間見せて頂いた後、宿泊する37階のスイートに向かう。ルームキーは見たことがないタイプでエレベーターでもかざすセキュリティー・・・と言う訳で今回はここまで。次回は広々なスイートルームを紹介するわ。続く・・